久留米というまちは特異なまちで、数多くのアーティストや著名人を輩出しています。ご存じ松田聖子さんやチェッカーズ、昔のギター小僧たちがあこがれた鮎川誠さん。時代を遡れば天才洋画家の青木繁や坂本繁二郎、数え上げればキリがありません(ちなみに一風堂の河原成美社長も久留米の三潴出身)。まるでダイヤの原石産出量が世界一の南アフリカの如く、久留米は「才能人間産出の南アフリカ」であります。ただ残念なことに、その原石のほとんどが東京で研磨されて宝石となり、全国に売り出される。これもまた、南アフリカで掘り出されたダイヤの原石が最終的にはロンドンやパリの宝石店から世界中に売り出されるという構図に似ています。私は以前から思っていました。久留米はいつまでもただの原石産出の地でいいのかと。しかし行政は、足下の原石にはなかなか気づかないようです。
久留米には人間の原石のみならず、他所にない「宝」が多く隠れています。たとえば昭和の雰囲気を色濃く残したかつての歓楽街の存在、これは映画監督の瀬木氏も全国的に珍しいと絶賛していました。しかしながら久留米にはそれをPRするフィルムコミッションの組織もなく、映画のロケ誘致でまちを活性化しようという発想もいまひとつ感じません。人口30万の中核都市でフィルムコミッションが存在しないのは久留米くらいでしょう。
手前味噌ながら、映画「ラーメン侍」。たまたまこれを劇場で観た大分県宇佐市の是永市長が「映画は素晴らしいシティセールスのツールになる」と感銘し、早速同映画の瀬木監督起用で、地元・宇佐市を舞台にした「カラアゲ・USA」という映画の制作が決定。宇佐市は数千万の予算を計上したと聞きました。そして現在、宇佐フィルムコミッションの音頭で、市民・行政が一丸となり、熱気溢れる(宇佐市のHPを見ても感じる)撮影が進行しています。
何だか映画の話で勝手な私の思いの丈を語ってしまいましたが、要は、久留米こそは、宝の原石の採掘から研磨、全国販売までのしくみを作り、全国に例のない地域活性化のモデルシティを目指すべきだと思っているのです。これからのまちづくりは「前例のないことはやらない」ではなく「前例のないことからやってみる」という発想が大切ではないでしょうか。