先日、モヒカン(ラーメン)の社長・於保クンから電話がありました。彼は、私の本コラムを愛読してくれているらしく、電話は、前号のコラムで紹介した謎の言葉「ヒャー」についての貴重な情報でした。於保クン曰く、「香月さん、『ヒャー』はですね、佐賀弁で『ハエ(蠅)』のことで、それが訛って『ヒャー』になったとですよ。その語意は間違いなく『つまらん』『くだらん』という意味です。だって俺、佐賀におるとき、いつも『お前はヒャーか』ち言われよりましたもん」
スッキリしました。冥土のオヤジも、きっと「おー於保、よう言うてくれたにゃ。これで心置きなく成仏できるばい」と喜んでいるでしょう。於保クンありがとう。
しかし久留米弁もゲサッカ(かっこ悪い)ですが、佐賀弁も、がばいゲサッカですな。話は少々それますが、その「がばい」について、あの島田洋七さんのエッセイ「佐賀のがばいばあちゃん」。それは、そもそもタイトルが文法的に間違っていますね。それは佐賀県人のみならず久留米を含めた「がばい」という方言を使う地方の多くの皆さんが、そのタイトルに違和感を感じていると思います。正しくは「がばい」とは、「とても」という意味で、形容詞の前に付ける副詞であり、「ばあちゃん」という名詞を補佐するものではありません。従ってそのタイトルを直訳すれば「佐賀のとてもおばあさん」となり、物の本の作品名としては適切ではありませんね。
話を戻して、そういえば最近、「ヒャー」よりも更に難解な佐賀弁を耳にしました。柳川も、その対岸の島原も、有明海沿岸の地方では総じて「カニ(蟹・主にワタリガニ)」のことを「ガネ」と呼ぶようです。数年前のある日、うちの店内でのこと。高田町出身のO店長が、佐賀から通勤している生粋の佐賀人・Kクンに聞きました。O店長:「俺たちゃカニんこつは『ガネ』ち言うばってん、佐賀じゃ何ちゅうと?」Kクン:「俺たちゃ『ギャー』ち言います」O店長「(驚愕の表情で)なんそい、語源のカケラもなかやっか」・・・最近この話を聞いた私は抱腹絶倒でした。「ヒャー」だの「ギャー」だの、まるで絶叫マシーンに乗っている人たちの叫び声です。たとえば「そのカニ、つまらない」は、「そんギャー、ヒャー」となるのでしょう。久留米人の私は言うのも何ですが、恐るべし佐賀弁です。しかし、関東人がこれを読んだら「目糞鼻糞を笑う」たぐいの話でしょうね。
今回は、佐賀の皆様に深謝。