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第四十四話 異星人・麺次郎の物語・その1

 はじめまして。僕の名は汁宮麺次郎(しるのみや めんじろう)。
 遠い宇宙の彼方から地球監察の特命を帯びて来ました。
 僕の星は、地球からはるか十六万光年という仔豚座(地球の星座名とは無関係)あたりのマゼラントーウスナル星雲に属する惑星パイタンという星です。
 僕の姿は、地球でいうヒューマノイド型なので、一見地球人とソックリなのですが、やはり環境の異なるこの星で生きていくためにはパイタン星のハイテクが必要です。
 そう、僕は常に特殊スーツに身を包み、背には生命維持装置をしょってなければなりません。でもご心配なく、地球人に気づかれないよう、特殊スーツのデザインは、地球のパッピとステテコ型。背中の生命維持装置はマキやシバで包み隠して、背負子(しょいこ)でしょってます。また、その装置とスーツの接続コネクターは股間にあるので、その保護のための超合金カバーは、藍染の前掛け(地球の酒屋の店員さん用腰エプロン)型にしています。そして常時パイタン星との通信は欠かせないので、左手の通信機はラーメンのドンブリ型に、右手のマイクはワリバシ型に改造、アンテナは頭のサムライ型チョンマゲで隠してみました。これで何と!ムフフフ…、ラーメンを食べる格好で異星間通信ができるのです!
 どうです、完璧なカモフラージュでしょう。これならニューヨークを歩いていても、久留米の西鉄あたりのストリートミュージシャンの前で女子高生に混じってウンコ座りしていても、ただ“柴刈りのあとにラーメンを食べているフツーの地球人”という感じで、何の違和感もありませんね。やはり出発前、充分に地球を研究した甲斐があったというもんです。ワッハッハ。
 BUT、ばってん、僕は地球では少しチビかも知れません、身長四十センチはパイタン星では大人の平均身長なんですが…。
でも、ま、いいか。だって完璧なカモフラージュなんだもん。ワッハッハ。
 え?「どこに住んでるの」ですって?
 それはナカナカ言えませんが、あなたにだけコソ~っと教えちゃぁたい。
 我々の地球秘密基地は、実は、久留米のTラーメン合川校舎の百葉箱の中です。
愛用の宇宙船(というより“最新型惑星間シャトル”といってほしいのですが)は、Tラーメンの厨房でスープ釜のフリをしています。当然このシャトルの燃料は豚骨スープです。
 そんなパーフェクトな秘密基地の前で、僕はときおり地球観察のため、銅像のフリをしながら道行く地球人を眺めております。
 この星に来てまだ三ヶ月ほどですが、銀河の片隅の小さな星系、太陽系の第三惑星・地球で、劇的な繁殖をとげている生物“人間”の生態が次第に判りかけてきました…

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