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第八十二話 長男の嫁はイヤ!

 先日たまたま見たテレビで心がスカッとすることがありました。それはある番組での細木数子さんの一喝の弁です。
 それは、スタジオに集めた百人の若い独身女性たちに司会者がアンケート式の質問をし、その答えに対し、細木さんがコメントするという内容でした。そのときの質問は「“長男の嫁にはなりたくない”イエスかノーか?」というもので、長男であり、かつ息子を持つ僕としては見逃せない質問でした。
 さて、その結果はというと、イエスと答えた女性は七五人、ノーは二五人でした。イエス(長男の嫁は嫌だ)が多数であろうことは想像していましたが、以外にノー(長男の嫁でもよい)と答えた女性が二五%もいたことに、僕は意外な喜びを感じました。
 そこで司会者がイエスと答えたある女性にその理由を尋ねると(言葉の細かいところは不正確ですが)「だってェ~、姑と一緒に暮らすのはウザイしィ~、特に田舎では跡取りがどうのこうのと面倒だしィ~」という答え。予想通りながらやはり悲しいものがありましたが、一方でノーと答えてくれた女性たちに、僕は一縷の望みを託しました。しかしその望みはすぐに打ち砕かれました。女性曰く「長男だとォ~、何と言ってもォ~、財産とか資産とか~、全部もらえるじゃないですかァ~」と。
 両者の言葉を聞いて、僕はこの国に滅亡の危機を感じました。そして思いました「中国の潜水艦よりも北朝鮮のテポドンよりも先に、自国のこんな娘たちによって日本は滅ぼされるかもしれん。ならいっそ、必死で救いを求めている日本人拉致被害者と、この娘たちとを交換したほうが、よっぽど祖国のためばい」と。しかしそんな僕の心を救ってくれたのが、細木さんの次の一喝。
 「バカバカしくて答える気にもなれない。長男でも親の財産は独り占めできないのよ。子供全員平等なのよ。それより長男を嫌う貴方たちに聞くけど、みなさん長男は生まないのね?男の子は一人も生まないのね?その上での考えならまだしも、だいたい貴方たちは“因果応報”の大原則を何も解っていない。そんな貴方たちが生む長男には嫁は来ないわね。来ても貴方たちみたいな嫁が来て、今度は貴方たちの長男が苦労するのよ。昔の戦争では長男は徴兵されなかったの。外で戦う者だけでなく、家を守る人も必要で、その役目が長男だったの。家を守るということは、国を守るということ、それを当時は皆わかっていたの。そんなことも何も考えない小娘が言いたい放題!このままでは日本はダメになるわ!」大体こんなコメントでしたか。
 スタジオは一瞬シーン、“小娘”たちは理解したのかシラケたのか、ただ無言。僕は心中、拍手喝采でした。そして僕はふと、二十年前の結婚当時を思い出しました。今の女房と結婚を決めたときのことを。
 「わかっとろーばってん、俺は小さなラーメン屋の長男。当然跡を継ぐ。その覚悟はあるや?」という僕の問いに、女房「あなたのご両親が何屋さんでもかまいません。そしてあなたのご両親なら、自分の親と思って愛します」女房は、その宣言から二十年を経たいまもそれを貫いているようです。金剛力士のオヤジも実の娘のように可愛がりました。そのオヤジが亡くなったとき、女房が泣きじゃくりながら棺桶に一人しがみついて、なかなか火葬ができなかったのを憶えています。
 もしかしたら今の自分や店があるのも、貧乏ラーメン屋の長男の嫁に、喜んで来てくれた女房のお陰かもしれません。感謝しています。・・・ちょっとテレクサイ。

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