ラーメン今昔物語 ・ - プロのコツ“味の決め手”-
ラーメン屋の“HK”
今回は、ラーメン屋のワタクシが皆様にプロのコツをお教えしましょう。さあ、これさえ読めばアナタもラーメン屋になれる(かも)。
さて、まずは調理のコツから。(各ラーメン屋さんで若干の違いがあると思いますが)。
最初に、充分に沸騰したタップリのお湯に、麺をよくほぐしながら入れます。 次に、ラーメン丼にタレを少々入れます。このタレは「元ダレ」や「塩タレ」または「バカタレ」(これはウソ)
など各ラーメン屋さんで呼び名が違うようです。ちなみにウチの店では「ラーメンしょうゆ」といってます。このタレには、塩と醤油そしてその店独自の各種調味料が絶妙なバランスでブレンドされています。このタレこそが、その店の味の個性そのものが濃縮された、いわゆる「秘伝のタレ」と呼ばれるものであります。釜のスープは味付けされてませんので、丼にそそぐタレのサジ加減ひとつで一杯のラーメンが濃い味にも薄味にもなります。次にラードを少々加えた後、豚骨ラーメン独特の強火で激しく沸騰・白濁させた大釜のスープを網で漉しながら丼にそそぎます。あとは、茹であがった麺を良く水切りして静かに丼に入れ、最後に新鮮な刻みネギ・スライスしたチャーシューなどをトッピングすれば、さあ出来上がり。ザッとこんなもんです。
さて、これからお話するのがプロのコツ。僕の店はオープンキッチンなので注文されたお客さんの姿を見ることができます。僕の場合、注文伝票が入ったら必ずお客さんの姿を見てから味付けを決めています。女性の場合、一般的に脂と塩分の取り過ぎを嫌われるので、タレとラードは少なめにした「あっさり・薄味」がよろこばれるようです。逆に男性の場合、特に汗をかく肉体労働関係の方や体育会系の学生さんに対してはタレとラードはやや多めにいれて「こってり・濃い味」にしています。この味付けはお酒を飲んだ帰りのお客さんにも合うようです。
ちなみに、夜の繁華街に比較的しょっぱい味のラーメン屋さんが多いのは、そんなお客さんの嗜好に応えているからでしょう。また、お年寄りには、やはり「あっさり・薄味」にして、なおかつ麺を柔らかく茹でて歯になるべく負担がかからないように心がけています。これら様々な味付けも、夏と冬では微妙に違ってきます。もうお解りでしょう、たくさん汗をかく真夏に無意識に体が求めるは当然塩分ですね。ですから同じ「薄味」でも季節や天候によって若干の変化をもたせています。これら全ての状況把握と味付けの判断は、お客さんから一枚の注文伝票が来た途端、一瞬の内にこなさなければ、忙しいピークタイムには対応できません。しかし、人間には必ず味の個人差というものがあるということで、最近僕の店では、お客さんのご希望があればご注文の際にお好みの味や麺のかたさをお訊きするようになってしまいました。But・バッテン・ところがどっこい、長年ラーメン屋をやってると、初めての来られたお客さんでも、そのお客さんの顔を見れば「味の個人的な好み」も霊感的に見えてくるのであります。コレホント。
色々ゴタクをならべましたが、「うまい味」というものは、まず「質の良い食材」と「すぐれたレシピ」そして「相手が好む味付け」 これらが三位一体となって醸し出されるものと思っています。
あ、ひとつ一番大切なものを忘れてました。それは、“おいしく食べてもらいたい”と願う作り手の「想い」という名の調味料。これを最後に“ひとふり”、
これが味の決め手です。
ー次号も乞うご期待ー
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