◆◇◆ ラーメン今昔物語 〜初代熱風録・その5〜 ◆◇◆
屋台時代、我が家は六畳一間のオンボロ借家住まいでした。その家はとても古く、雨が降るたびに雨漏りとの戦い。狭い部屋のあちこちに空き缶を置いて、その隙間で食事したり寝たりするという家の中のアウトドア生活。梅雨の時期などは、雨漏りの湿気で畳が腐り、そこから白いキノコが何本か生えていました。僕は友だちを呼び寄せ、それを見せては「ほら〜、ウソじゃなかろうが〜。ホンナモンのキノコが、ちゃんと家の中に生えとろうが〜」と、それを信じなかった上流家庭の子(現在A幼稚園のF園長)に自慢していました。 そんなある日、東の空が白み始める明け方、突然けたたましいサイレンの音で僕たち家族は目を覚ましました。皆で外に飛び出すと、空が炎で真っ赤に染まっています。火事です。すぐ近くの家がメラメラと音を立てて燃え上がっています。近所の人たちも皆外に出て、心配そうに火の行方を見守っています。母はなぜか枕を抱きしめて立ちつくしています。僕は怖いながらも、慣れ親しんだキノコの家との別れを覚悟していましたが、やがて消防士や消防団の皆さんの懸命の消火活動のおかげで、何とか火は収まり、家とキノコは焼かれずにすみました。 〜次号へ続く〜 (2005年11月) | |||||||||||