まあ、そんな状況なので「ラーメンは旨ければいい」ということにして、別にラーメンの分類化 などどうでもいいことかもしれませんが、「君はどんなラーメンが好き?」と問われたときのために、僕なりのラーメンカテゴリーをまとめてみました。 昔から中華料理の世界では、「清湯」「白湯」という言葉がよく使われています。端的に言えば、「清湯」とは澄んだスープ、「白湯」とは白く濁ったスープのことです。
かつて戦後間もない時代(昭和20年代)、主に中国から引き揚げてきた日本人たちが、全国各地で、今のラーメンの原型である「支那そば」を誕生させ始めたころ、そのほとんどは、大陸で習っ た見よう見まねの清湯スープでした(実は、九州でもこのころは「支那そば」と呼ばれ、スープも澄んだ清湯スープでした)。 やがて、蔑称とされた「支那そば」が「中華そば」と改称され始めたころ、久留米のある店の主人がスープの火加減の失敗で偶然誕生させた白湯スープ、これがいわゆる現在の白く濁った豚骨 スープの原型とされています。 そして昭和30年代「中華そば」は、清湯スープも白湯スープも、ひとくくりにされたまま「ラーメン」という名に変わり、いつのまにか混乱した分類化の中で今に至っていますが、僕はこの時代 に着目しました。 今でこそ、ラーメンは日本の一つの食文化として立派にその地位を得た感がありますが、当時は、伝統のない国籍不明のその食べ物に対して、食べる側も作る側も文化的な価値観などなく、ま してこれほど地域差の激しい特徴を持つこの食べ物を、全国的視野でダイナミックに研究しようとする人は皆無。当然、ラーメンが地域、特に九州を中心にそのスープの系統が大きく二つに分かれ 始めた歴史の瞬間は完全に見落とされてしまいました。 今のラーメン分類化の混乱の要因は、まずそこにあると考え、僕なりに整理してみました。