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 現在、全国のラーメンを分類化すると、一般的には「豚骨・醤油・味噌・塩」と、スープの特徴によって大きく4種類(いわゆる四大ラーメン文明)に分けられていて、各地のご当地ラーメンも基本的にはこの4つのカテゴリーのどれかに属すると言われています。  しかし、僕は最近このラーメンの分類化に疑問を感じています。たとえば、豚骨という食材は豚骨ラーメンだけに使われるものと思われている方も多いようですが、実際は、関東の琥珀色の醤油ラーメンにも、函館の透き通った塩ラーメンにも、そのスープの主な素材として豚骨が使われているのです。ただし、そのスープには、鶏骨や様々な野菜類、そして昆布・鰹のような海産物などの食材が、豚骨と組み合わされています。  一方、九州の豚骨ラーメンも、店によっては豚骨の他に鶏骨や野菜を加えるところもあり、また多くの店が豚骨スープの隠し味として醤油を使用しているのも事実です。  このように「豚骨100%のスープが豚骨ラーメンで、スープに豚骨以外の食材を一つでも加えたら豚骨ラーメンではない」という素材による分類化、そして「スープに含まれる醤油や味噌などの調味料の有無」での分類化、近年このいずれの分類化にも矛盾が生じてきました。  さらに、近ごろは全国的に豚骨ラーメン(スープ)がブームのようで、関東や札幌などでは、元々その土地に根付いていたラーメンに豚骨ラーメンが合体したような、濁った新種のスープに人気があり、いつのまにか「豚骨しょうゆ」とか「豚骨みそ」「豚骨しお」という新しいラーメンのカテゴリーが加えられるようになりました。  言うまでもなく、その新しいカテゴリーにもハッキリした定義はありません。

 かくのごとく、ラーメンの分類化を豚骨という “素材” や醤油や味噌という “調味料” だけで単純に分類化するのは、不可能な時代になってしまいました。